基礎から臨床へ 2
様々な経緯と様々な運命的とも思える出会いとに後押しされて、新天地であるペインクリニックの世界へと辿りつけたのですが、あと数年で40歳に手が届こうという年齢で後先も考えずにペインという新しい世界に飛び込む決断が出来たのは、終始応援してくれた信頼のおける助言者の存在と、何よりも病理学で得られた医学的経験とそのことにより構築できた医学的根拠がバックボーンとなり、衝動的とも思えるエネルギーを突き動かしてくれたからだと思っています。
そのような財産を頼りに飛び込んだペインの世界でしたが、やはり最初は戸惑うことばかりでした。どの様なことに戸惑ったのかと言えば、何よりも患者様の違いに戸惑いました。ペイン、デビューの初日、待ってましたとばかりの洗礼を受けたのですが、いわゆるMonster-Patient と言われる患者様で、そのMonster ぶりにも驚かされましたが、私が何より驚いたのは患者様が口を利くというそのことでした。(それも信じられないような礼儀知らずの暴言を・・・)
私がそれまで向き合ってきた1542名の病理学教室での患者様は、皆さん寡黙で良い方ばかりだったのですから・・・。(これはジョークではありません。本当にその時はそう思ったのです。)今から考えるとまるで笑い話のような話ですが、実際にそのような思いになり憂鬱な気持ちで病理の患者様を懐かしく?思ったりしたものです。
しかしそんな手荒い洗礼も何とか乗り越えられ、ペインでの仕事の意義も見出すことが出来、その後18年間も痛み治療の世界で活動できたのは何にも増して幸せなことだったと思っております。
ペインクリニックという科は疼痛の診断と治療を行う専門外来です。その主な手段は麻酔薬を用いた神経ブロックや様々な鎮痛薬を用いた鎮痛法、鍼灸療法や心理療法等広範な方法を用いて痛みの治療を行っています。また大学病院のペインクリニック科ということもあり、各医療機関からの難治性疼痛疾患の紹介も多く、様々な病気と向き合うことが出来ました。それと附属病院の緩和ケアチームにも所属し主にがん患者様の治療に参加できたことはこの上ない経験となり、現在の仕事に対する大きな自信と患者様と向き合う際の絶対的根拠となっています。